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PaniCrew・中野智行、日韓文化の融合に挑む

 韓国の若者文化の発信地テハンノで14年に初演され、その後も再演を重ねているミュージカル『マイ・バケットリスト』。日本にも昨年上陸していたが、今年初めて日本語バージョンで上演される。その演出を手がける中野智行氏に日韓文化の融合や日本向けのローカライズを聞いた。

【画像】稽古場でノーメイクのキャストたち

◆過去の演出経験を活かしながら取り組んだ異文化アレンジ

 韓国で大ヒットした『マイ・バケットリスト』は、不良少年と余命宣告を受けた真面目な少年2人の物語。全編2人芝居になり、韓国ミュージカルの日本語版演出を初めて手がける中野氏や、韓国人キャストにとってもに挑戦になる。

「1.5時間超を、2人だけで歌も踊りも芝居も集中して演じないといけないから、かなりの体力と気力が必要。韓国にはどれか1つではなく、バランスよくすべてができる俳優がたくさんいます。うらやましい限り」

 そんな信頼を置く俳優たちが演じるキャラクターの魅力が、今作の最大の見どころ。中野氏のプレッシャーもかなり大きいようだ。

「演劇にあまりなじみのない人は、2人芝居をハードルが高く感じるかもしれないですが、実はその逆で、2人の会話が芝居の中心になるので、物語の世界に入り込みやすいんです。本来なら交わることがなかったかもしれない正反対の2人に、気づいたら感情移入していると思います。それくらいそのキャラクターは心に焼きつく。そこが僕の演出のいちばん重要なポイントです」

 ダンスパフォーマンスグループ・PaniCrewの活動のほか、浅草「ゆめまち劇場」の運営、公演プロデュースを行う中野氏。今回の挑戦は、かつての縁から実現したという。

「20年ほど前、当時所属していたアミューズの大里洋吉会長が韓国のダンスミュージックに注目していて、PaniCrewもキム・チャンファンさん(シン・スンフンなどを手がけた名プロデューサー)に楽曲提供を受けているんです。その後も、人生のターニングポイントごとに韓国との縁は深くて、その頃の関係者から今回のお話をいただきました」

◆いろいろな俳優で再演できる息の長い作品を目指す

 初の韓国ミュージカルの日本語版演出。それまでの自身の経験を活かしながら、それぞれの文化を活かすことを念頭に置いて準備を進めた。

「まずは、韓国語バージョンを毎日繰り返し観ました。翻訳された脚本を読み合わせて、シーンに沿って日本語のニュアンスをアレンジしたり、韓国人キャストがしゃべりやすい言い回しを考慮しながらセリフの量を調整したり、より日本の観客に伝わるようにト書きを付け加えたり。そんな作業に取り組んできました。僕は、これまでダンスの舞台演出をしてくるなかで、セリフがない感情演出にはト書きをたくさん書いていました。その経験からと、通常の舞台なら稽古に入ってからセリフの言い回しを変えることはよくありますけど、今回俳優たちは母国語ではない舞台に挑戦します。稽古に入る前に、お互いへの配慮を尽くして、いろいろなことを消化しておくべきだと思いました」

 海外の舞台を日本に持ち込むということでは、お互いの文化を融合させて新たなエンタテインメントを作り出す側面もあるだろう。

「韓国版を観て、いまの若者の考え方が表れていておもしろいと思いました。でも、その感覚は韓国だけでなく、世界中どこでも通じる普遍的なもの。だから、原作の良さを消さないように日本版に昇華させることが僕のいちばんの使命ではないかなと。そのなかで、本筋はブレずに、このシーンは日本でならこう解釈するとか、日本のいまの若者だったらこういう立ち居振る舞いをするとか、国と国の文化間の差異を、日本の観客が観たときに違和感なく楽しめるように微妙に調整していくことは必要です。そういった点を最初の段階で細かく作り込んでおけば、この先もいろいろな俳優で再演できる、息の長い作品になるかもしれない。やるからにはそこを目指したいと思っています」
(文:西森路代)

(提供:オリコン)
2018/2/3 08:10 配信

韓国ミュージカル『マイ・バケットリスト』の日本語版演出を手がける中野智行氏
韓国ミュージカル『マイ・バケットリスト』の日本語版演出を手がける中野智行氏