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レイプ被害者を描きニース脚本賞

 世界的に「#MeToo」運動の機運が高まるなか、実在の集団レイプ被害者の半生を描く日本映画『私は絶対許さない』(公開中)が、『ニース国際映画祭 2018』外国語部門の脚本賞を受賞した。同脚本を手がけた黒沢久子氏に社会問題とエンタテインメントの関わり方を聞いた。

【劇中写真】加害者の男たち囲まれる15歳の主人公

◆社会問題に触れる人間ドラマを描いてきた

 同作は、15歳で集団レイプに遭い、加害者への復讐だけを胸に生きてきたという雪村葉子氏による手記をもとに、その半生が「15歳で集団レイプされた私が、風俗嬢になり、さらに看護師を目指した理由」というテーマで映画化された。

 脚本を手がけた黒沢久子氏は、これまでに戦争で四肢を失った主人公とその妻の姿を通して戦争の一面を切り取った『キャタピラー』(若松孝二監督)の共同脚本や、女性の生きざまを赤裸々に活写する瀬戸内寂聴の小説を実写化した『花芯』(安藤尋監督)、離れ離れになった家族の心の傷と再生を描く『四十九日のレシピ』(タナダユキ監督)など、社会性のあるテーマで人々の心の奥の機微をすくい取るような人間ドラマを描いてきた。今作だけでなく、これまでにもエンタテインメントで社会問題に触れてきている。

「映画やドラマで社会問題を取り上げる意味は、その問題に『顔』を持たせられるということだと思います。誰もが『社会』に生きている以上、『社会問題』は自分の問題であるはずなのに、直接的に関わっていない限り、人はあまり問題意識を持たないものです。自分も含めてですが」

◆“社会派”と構えないことで身近に捉えてもらう

 多くの情報があふれかえり、さまざまな出来事や事件が絶えずニュースとして流れてくる現代において、その1つひとつにはなかなか意識が向きにくい。とくに若い世代においては、自分に直接的に関わってくる狭い範囲の情報以外は、ほとんどが通り過ぎてしまっている。そんな世の中で起きている社会問題に気づくことができない多くの人々に対して、社会への関心を持たせることができるのがエンタテインメントであり、その1つが映画になる。

「たとえば、ニュースで『働き方改革』とか言われても、20歳の女子大生にはピンとこないかもしれない。でも、就職したカレシが残業代はもらえないのに週40時間も残業させられているとなったら、『それは大変だ』となる。つまり、いかに当事者意識を喚起できるか。登場人物を自分のように、あるいは、家族や友だち、親戚でも近所の人でもいいのですが、とにかく、いかに身近に起こり得ることなんだと捉えてもらえるか。だから、私は、大上段に『社会派』という作品よりも、恋愛や家族の物語のなかで社会問題を描いていくような作品を作っていきたいと思っています。もっと言えば、どんな作品でも、人間を描く限り、そこに社会があり、問うべき社会問題があると意識して書いています」

◆現代の『正義』とは異なる『勧善懲悪』エンタメ

 黒沢氏がエンタテインメントで社会問題を取り上げていくもう1つの理由が、多様化する社会における“正義”が一義的なものではなくなっていることへの想いがあること。もはや時代と合わなくなった正義に依拠する、“わかりやすさ”でヒットを狙う大作映画も多いが、そんななかで、そことは一線を画する、ヒリつくような社会の現実を切り取りながら、エンタテインメントを通して社会性のあるテーマを伝えていく。

「かつては『正義』は1つだったかもしれない。でも、現代の『正義』は1つであるとは言い切れないし、むしろ言ってはいけないんだと思っています。それはエンタテインメントで人気のある『勧善懲悪』を否定することになるわけですが、そこは、それが得意な人に任せて、私は個々が信じるそれぞれの『正義』を互いに尊重し合える寛容さを大切にしていきたい。その姿勢自体が、私なりの『社会問題を描くこと』だと思っている昨今です」

(提供:オリコン)
2018/5/31 08:10 配信

全国順次公開中(C)「私は絶対許さない」製作委員会
全国順次公開中(C)「私は絶対許さない」製作委員会