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芸能人のメンタルケアの必要性

 三浦春馬さん、芦名星さん、藤木孝さん、竹内結子さんらが急逝し、衝撃に包まれた芸能界。「自死」との報道が立て続けになされ、コロナ禍もあいまって世間の不安も高まっている。そんな中、芸能人の権利を守る『日本エンターテイナーライツ協会』が『芸能人の自殺について』という声明を発表。芸能人のメンタルケアの必要性、そして報道の問題点とは? 同協会の佐藤大和弁護士に考えを聞いた。

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■報道にも問題、メンタルケアも責任も曖昧な現状

 この声明は、【1】WHOの「自殺報道ガイドライン」(『WHO 自殺予防 メディア関係者のための手引き』)を踏まえた報道の徹底、【2】芸能人のメンタルヘルスに配慮した取材・報道の徹底、【3】芸能人のメンタルヘルスケアの必要性、という項目で構成されている。

 「現在の報道にはガイドラインが徹底されているとは思えませんし、一部の週刊誌等はさらに問題がある。また、以前から私たちは、芸能人に対する安全配慮義務の一つとして、メンタルケアの必要性を訴えてきましたが、未だにメンタルケアや安全配慮の責任の所在なども曖昧なままであり、法制度化に向けた議論や保護も十分になされていない。そんな現状があるため、声明を出すことを決めました」(佐藤弁護士/以下同)

 自殺報道ガイドラインでは、「努めて、社会に向けて自殺に関する啓発・教育を行う」ことのほか、「自殺を、センセーショナルに扱わない」「自殺の報道を過剰に、そして繰り返し報道しない」「自殺に用いられた手段を詳しく伝えない」「見出しのつけ方には慎重を期する」「遺された人に対して、十分な配慮をする」「どこの支援を求めることができるのかということについて、情報を提供する」などが提唱されている(一部抜粋)。

 これを見ると、昨今の報道のされ方に疑問が浮かぶかもしれない。佐藤弁護士も、「今は視聴率重視の報道が多いといえます。また週刊誌等では、芸能人に関する憶測や虚偽の報道、私生活の暴露など、自殺した芸能人の名誉を毀損したり、プライバシーを侵害したりする報道が散見されています」と警鐘を鳴らす。

 一見、華やかに見える芸能界。その第一線で活躍する芸能人たちは、まさに“成功した人々”だと思われがちだ。実際、三浦さんや竹内さんの報道の後、SNSなどでも「成功者に見える人でも自死を選ぶのか」「あれだけ華やかに見えた人たちに一体、何があったのだろう」といった驚きの声が多く上がっていた。

 一方で、芸能活動が「非常に高度なストレスにさらされやすい業務」という特性があることは、あまり知られていない。「具体的には、芸能活動そのものから発生するストレスだけではなく、私生活上の制約に伴うストレス、誹謗中傷によるストレス、週刊誌等による名誉毀損・プライバシー侵害報道によるストレスなど他の職業と比較しても多くのストレスがあります」と佐藤弁護士。

 仕事上の悩みはもちろん、有名ゆえにプライベートまでが縛られるほか、SNSなどによる誹謗中傷もある。この“特性”の上に、普段我々が日常的に抱えている一般的な生活上のストレスが重なる。また、“コロナうつ”に代表される、現在特有のストレスまでが蓄積されている可能性もある。

 「有名税だろう」「そのぶん莫大な収入を得ているじゃないか」と考える人もいるだろう。だが、高収入だからといって、ある職業で働く人が、重大なストレスをケアできないことは大きな問題ではなかろうか。

 「非常に高度なストレスにさらされやすい業務であるにもかかわらず、ストレスをケアする体制が整っていないため、芸能界の方々は周りに相談をしにくく、ストレスを溜めやすい環境にあります。そのため私たちは、芸能人に対する定期的なメンタルケアが必要だと考えているのです」

■レディー・ガガも薬服用を告白するアメリカ、「病院へ行くことを敬遠してしまう」日本

 実際、海外では俳優やアーティスト、著名人に対して定期的なメンタルケアが行われている。アメリカの芸能業界では、ボディケアとビューティーケアの基本にメンタルケアが挙げられており、それが受け入れられる土壌がある。

 例えばレディー・ガガも、インタビューで抗精神病薬を服用していることを告白。彼女の場合は、10代で受けた暴行に端を発するPTSDもあって特殊な例だが、重要なのは、メンタルの問題が重要視され、寛容に受け止められる社会や体制が整っているかどうかだ。

 一方、日本では、9月28日に放送された『とくダネ!』(フジテレビ系)で、竹内さんとの共演が多かった石黒賢が、「知られているがゆえに、病院へ行くことを敬遠してしまう」という現状について発言していた。心療内科へ通うこと自体が報道ネタになり、一般の目も気になる。それが、今の日本の芸能界であり、社会の問題点でもあるのだろう。

 「業界全体として、芸能従事者に対するメンタルケアは制度としていまだ導入されておらず、上手くケアできていない方々は一定数いらっしゃる。これまでも、芸能人のメンタルケアをしてきた事務所もあるかと思いますが、総じて不十分であると感じています。また、芸能人は種々の権利を生む出す職業でもあるにもかかわらず、芸能人の法的地位は曖昧であり、またその権利は法律で十分に守られていません。安定した職業であるとは言えないため、将来に対する強い不安も抱きやすい職業でもあります」

 生涯、生活していけるだけの収入を得られるかわからない。いつ仕事がなくなってもおかしくない。どんな仕事でも同じとはいえ、こと芸能界は浮き沈みの激しい世界だ。たとえ一線で活躍していても不安は拭いきれず、それだけストレスを抱え込んでしまうことは想像に難くない。

 佐藤弁護士は「これから必要なこと」として、メンタルケアの対策をしつつ、芸能人のストレスや不安を軽減又は除去する動きが大切だと提案している。「芸能人の法的地位を明確にし、将来が不安にならないよう権利を適切に保護。そのうえで誹謗中傷から守りつつ、芸能人の名誉やプライバシー(私生活)を守る動きが必要だと思っています」。

 「事務所側が、芸能人の精神的なケアをするため『いのちの窓口』の開設に対する動きがあると伺いました。これは大変良い動きです。今後、芸能業界全体として、事務所や会社の垣根を超えて、そういった体制作りを進め、充実させていくことが大事だと思います」

 さらに、当事者である芸能人による動きも望まれると語る。

 「日本では、現状、俳優など実演家らによる団体がまだまだ少なく、団体を作りにくい環境でもあります。ですが、健全な業界を作るためには、今後は芸能人らがユニオンを含んだ当事者団体等を作り、その団体等を通して、自らの権利を守るために問題提起をしたり、相互にケアをする仕組み作りをしたりしていくことが、強く求められると思っています」

 相次ぐ自死の報道。ここから浮かび上がってくるのは、芸能界はもちろん、一般社会にも通じる様々な問題点だ。報道のされ方、そしてメンタルケアの必要について、いま一度立ち止まり、向き合わなければいけないだろう。

(文:衣輪晋一/メディア研究家)

<プロフィール>
佐藤大和(さとう・やまと)。レイ法律事務所代表弁護士。2017年に、芸能人の権利を守る団体である「日本エンターテイナーライツ協会」を立ち上げ、共同代表理事を務める。エンタテインメント、芸能人法務、スポーツ法務、マスコミ対応、企業法務、週刊誌等による誹謗中傷問題などが得意分野。これまで、『バイキング』(フジテレビ系)、『モーニングCROSS』(TOKYO MX)など、メディアにも多数出演。

■「日本いのちの電話」
ナビダイヤル:0570-783-556(午前10時~午後10時)
フリーダイヤル:0120-783-556(毎日・午後4時~午後9時/毎月10日・午前8時~翌日午前8時)

(提供:オリコン)
2020/10/16 07:30 配信

芸能人へのメンタルケアの必要性を佐藤大和弁護士が語る
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